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「重力ピエロ」と「卵の緒」 [本]

「心の繋がり」は「血の繋がり」を超える

両作品の雰囲気はまるで異なっていますが、主題は同じなのかもしれません。

重力ピエロ.jpg
つぼっちの好きな伊坂幸太郎の、「重力ピエロ」。
先日、映画も観てきました。
泉水と春(ともに英語でスプリング)の、兄弟の物語。
泉水は両親と血が繋がっているが、春は母親としか血が繋がっていない。
春は、母親が強姦されたときにできた子供。
存在自体にジレンマを抱える春の苦悩は、他人には量り知ることができないものでしょう。
強姦という犯罪が無かったら、自分は生まれてこなかった。
そんな彼のレーゾンデートルとは、一体何なのか・・・?

普通に考えれば、強姦でできた子供を産もうとは決して考えないはず。
そんな、現実では起こり得ないことが起きたことによる「奇跡」。
裏表紙のあらすじにも書いてありますが、この小説は倫理観を問うようなものではなく、
一つの家族が起こした奇跡を味わう作品なのだと思います。
両親は、春のことを普通の家族以上に、「最強の家族」として、とても温かく育てます。
ミステリー的な要素もありますが、端々に出てくる家族のエピソードが、
どれもじーんとくるものばかりで、最後に、読んでよかったと心から思えました。
伊坂作品には珍しく、終始、泉水一人の視点で話が進んでいくのも特徴です。

卵の緒.jpg
こちらは、瀬尾まいこの「卵の緒」。
表紙のカンガルー親子に惹かれて、ジャケ買いしてしまいました。
しかし、内容もとびきり良かった!

小学四年生の育生は、「僕は捨て子だ」と、
小さい頃に誰でも考えてしまうような疑問を持ちます。
母親にその疑問をぶつけ、証拠の「へその緒」を見せて欲しいと言ったら、
育生は卵から生まれたのだと、「卵の殻」を見せられた・・・

母親が育生と親子になった過程は、
強姦とはまったく違うにしろ、相当に衝撃的なことです。
「へその緒」だけが親子の証じゃない。
母親の育生に対する愛情は、胎盤による繋がりだとかいうことを、軽く飛び越えていました。
読んだ後、とても優しい気持ちになってしまいました。

「血の繋がり」はとても大事なことのように思えるけど、
実はそれほど大事なことではないのかもしれない。

2つの作品から学んだことは、家族の強さは「絆」の強さだ、ということでした。
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コメント 4

dendenmushi

@おや、こんなところで『卵の緒』にであうとは…。ひきこもりのでんでんむしも、つい一言。
 これはね、実は最初にNHK-FMの朗読で聞いたのです。思わず引き込まれてしまって…。瀬尾まいこさんの本買いに行ってしまいました。
 そうなんです。けっこうミーハーでしょ。
by dendenmushi (2009-05-28 06:05) 

toshi

こんばんはー
最近はとんと本を読む事もなくなりましたが
血のつながりよりは人と人との絆ですね^^
by toshi (2009-05-28 21:20) 

つぼっち

>dendenmushiさん
瀬尾まいこだと、「幸福な食卓」が一番好きです。
この作品に限らず、食卓のシーンが温かく描かれているのが
気に入っています。
by つぼっち (2009-05-31 21:28) 

つぼっち

>toshiさん
本当にそう思います。
人との絆を大切にしたいですね。
by つぼっち (2009-05-31 21:33) 

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